外国人に対する尋問手続

外国人に対する尋問手続

先日,外国人を相手とする民事訴訟において,日本語を理解しない当該外国人に対する尋問手続が行われました。

日本人に対する尋問手続にはないことがいくつかありましたので,忘れないうちに雑感を書き留めておきます。

なお,刑事事件では時々外国人が被告人となり通訳を入れて行うことがありますが,民事手続ではなかなか稀なのではないでょうか。

① 通訳は,当該外国人に対する尋問についてのみ行われます。他の当事者や証人に対する尋問やその他の手続について,刑事事件のように通訳人が通訳することはありません。当該外国人がどうしても通訳を必要とするなら,自分で準備してくるしかありません。

② 通訳人の事前準備のため,期日の前に(したがって主尋問が行われてもいないうちに)反対尋問の骨子を裁判所に送付しておく必要がありました。反対尋問は,尋問対象者の答えを聞いてその場で突っ込みを入れていくものですから,事前に準備したものとは全くことなる質問内容になることが多々あります。今回も,事前に裁判所に送った内容とは全く異なる内容の尋問になりました。事前の質問提出にどれほどの意味があるのか少々疑問に感じるところでした。

③ 尋問手続に入る際には,嘘をつかないという宣誓をします。その宣誓は,宣誓書を読み上げて行います。宣誓書には,漢字を読めない人のために,漢字には全部かながうってあります。しかし,日本語を全く読めず意味も解しない人の場合は,となりに書記官が立って代読します。それを通訳人か通訳して,本人が理解した上で名前のみを言います。

④ 主尋問は,おそらく事前準備どおりの内容だったらしく,通訳も順調でした。

⑤ 私の反対尋問では,事件を把握していない通訳人には突っ込みどころを理解してもらえず,何度も通訳人との間で意味の確認のやりとりを行いました。そのため,勢いで証言させるという手法を取れず,また,随分端折って伝えられている感じもあり,イライラの募る尋問となりました。

⑥ 尋問する相手が通訳人であるかのような錯覚に陥り,通訳人を責め立ててしまいそうになりました。

⑦ 外国語が英語であれば私も通訳人の通訳が正しいかどうか判断ができますが,ニッチな言語だと,どう訳されていてもその是非が分かりません。当方の依頼者は,その言語に精通していましたので,尋問手続の間中,「そうじゃない!」などと小声の叫びを繰り返していました。

相手方は,異国の地の裁判所で堂々と証言をしていました。仮に私が外国で裁判をするとなれば,こんなに堂々とできないだろうな,と感心しきりでした。

(2016.2.20. 檜山洋子)