破棄自判の最高裁判決

破棄自判の最高裁判決

 私は37年間弁護士をしていますが,長い弁護士生活の中で,高等裁判所で敗訴したので最高裁判所に上告したところ,破棄自判で逆転勝訴をした事件が3件あります。

 最高裁判所は法律判断だけを示す法律審です。事実の認定は高等裁判所以下の下級審の役割で,最高裁判所では事実審理はできません。下級審が確定した事実を法律に当てはめて最終的な公権的解釈をするのが,最高裁判所の職責です。

 最高裁判所は,上告や上告受理によって,原審(高等裁判所)の法律判断が誤りだとした場合は,まず,判断理由を示して原審を破棄する判決をします。そして,2通りの判決をします。第1は,破棄の理由とした判断で結論を導くための事実審理が尽くされていない場合は事件を原審に差し戻します。最高裁判所は事実審理ができないから事件を原審に差し戻すのです。第2は,破棄の理由とした判断で結論を導くための事実審理が尽くされている場合は自ら判断して勝訴・敗訴の結論を示します。これを自判と呼んでいます。

 最高裁判所は書面審理が原則ですが,破棄判決をする場合は一般的に口頭弁論を開きます。最高裁判所から口頭弁論を開くと通知があれば破棄されることが前もってわかります。

 上告代理人としては,破棄自判は,自分の法律上の主張が最高裁判所に認められ,また、訴訟としては判決で直ちに決着がつきますから,依頼者には喜んでもらえますし,法律家としても嬉しいものです。

 訴訟は,その大半が証拠によって行う事実認定で勝負が決まり,法律解釈に争うがある場合は少ないですから,最高裁判所に上告や上告受理の申し立てをすること自体あまりありませんし,破棄される確率も低いのです。

 3件も破棄自判の判決を受けたことは,弁護士でも珍しい部類に入ると思いますが、法律解釈に争いのある事件・依頼者に恵まれたからです。

 この3件は,いずれも古い時期のものですが,判例付六法(条文の後に判例が掲載されている六法全書で,弁護士は大概もっています。)に掲載されています。最高裁判決として価値があるということなのでしょう。

 次回以降は,古い順番で,この3件の判決を紹介していきたいと思います。