平成26年会社法改正の概要

平成26年会社法改正の概要

 平成26年改正会社法が平成26年6月20日に成立し,同月27日に公布されました。

平成27年4月又は5月頃が施行の目途となります。

そこで,本稿では,「平成26年会社法改正の概要」をご紹介いたします。なお,詳細については,追ってエッセイを更新するよう努力していきます(汗)

 

第1 改正会社法のポイント

 ① コーポレートガバナンス(企業統治)の強化

 ② 親会社株主の保護に関する規定の整備

 ③ 新たなキャッシュアウトの方法と少数株主の保護

 ④ 組織再編の見直し

 

第2 改正会社法の概要

 1 コーポレートガバナンス(企業統治)の強化

 

 (1) 取締役会の監督機能の強化

 

   ① 社外取締役の積極的活用

 日本の企業では,生え抜きの取締役が多く,自らを取締役に引き立ててくれた社長には逆らえないという風潮があります。また,委員会設置会社でない会社では,代表取締役社長が人事権と報酬決定権を有していることが多いため,取締役が互いに監督するという機能が十分には果たされていませんでした。

 そこで,従前から社外取締役を積極的に活用するべきであるとの指摘が強くなされていることを受け,今回の改正法では以下のような改正が実施されました。

 

    a. 定時株主総会における社外取締役を置くことが相当でない理由の説明(327条の2)

 社外取締役を置いていない上場会社等の取締役は,定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければなりません。

 対象会社:「監査役会設置会社」+

        「公開会社かつ大会社」+

        「金融商品取引法第24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの」

  ※「公開会社」:譲渡制限株式を発行していない会社

   「大会社」:資本金5億円以上,又は,負債200億円以上の会社

   「金融商品取引法第24条1項・・・」:上場されている有価証券など(詳細は書ききれないので,金融商品取引法に関する本をご参照ください。)

 

    b. 社外取締役等の要件の見直し(2条15号・16号)

 株式会社の親会社等(会社を支配する個人を含む定義(2条4号の2))の関係者及び兄弟会社の業務執行者や,株式会社の取締役等の近親者(配偶者または2親等内の親族(2条15号ホ))は,社外取締役になることができません。

 また,現行法は就任前に当該株式会社又はその子会社の業務執行者であったものは社外取締役になることができないと規定していましたが,同要件の対象となる期間を10年に限定しました。

 

   ② 監査等委員会設置会社(2条11号の2)

 新たな,機関設計として「監査等委員会設置会社」が設けられました。

平成17年会社法改正の際に,アメリカの機関設計を参考として「委員会設置会社」(2条12号)が新たに設けられました。

「委員会設置会社」は平成26年改正により「指名委員会等設置会社」となります。

「委員会設置会社」は,取締役を業務執行者としてではなく,業務執行の監督者として位置づけ,実際の業務執行は取締役が選任する執行役(取締役ではありません。)が行うものです。

しかしながら,取締役を業務執行者から外すということに抵抗感があったのか,日本の企業ではあまり受け入れられませんでした。

そこで,平成26年改正では,業務執行者としての取締役と監督者としての取締役を切り離す機関設計として,監査等委員会設置会社が新設されました。

監査等委員会は,取締役3名以上で,その過半数は社外取締役でなければなりません。

また,監査等委員会となった取締役は業務執行を行うことはできません。

余談ですが,「委員会設置会社」は海外投資家からの日本企業に対する投資を進めるために新設されたようです。

機関設計が自国と同じであれば,海外投資家も安心して投資できるだろうということです。このような思惑は上手くすすまないですね。

 

  (2) 会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定(344条)

     現行法では,監査役又は監査役会が,会計監査人の選解任等に関する議案についての同意権及び提案権を有するにとどまります。

     すなわち,会計監査人の選解任等に関する議案を決定するのはあくまで取締役であって,現行法では,会計監査人の独立性が弱いとの批判がありました。

     そこで,改正法は,会計監査人の選解任等に関する議案の内容自体を,監査役又は監査役会が決定することとしました。

 

  (3) 資金調達

     株式会社の社員は株主です。しかしながら,公開会社では有利発行でなければ,原則として取締役会決議により募集株式の割り当て等が可能です(199条2項,201条1項)。

     これでは,取締役会が株主を選び,取締役会に都合のよい株主が議決権の過半数をとることも考えられます。

     そこで,改正法は,募集株式の割り当て等により募集株式の引受人となった者が,公開会社の総株主の議決権の過半数を有することとなる場合の規律を設けました。

      ① 引受人に関する情報開示

      ② 議決権の10%いじょうの議決権を有する株主からの反対通知により,株主総会による承認を要する

 

 2 親会社株主の保護に関する規定

   いわゆる多重代表訴訟の制度を新設しました(847条の3)。

   現行法では,完全親会社の株主が,完全子会社の取締役に対し,責任追及の訴えを提起する手段がありませんでした。

   そこで,改正法は,一定の要件の下で,完全親会社の株主による,完全子会社の取締役に対する責任追及の訴え提起を認める規定を新設しました。

 

 3 新たなキャッシュアウトの方法と少数株主の保護

   キャッシュアウト:支配株主が,他の少数株主の有する株式の全部を,その少数株主の個別の承諾を得ることなく,金銭等を対価として取得すること。

   改正法は,新たなキャッシュアウトの方法として,特別支配株主(議決権の90%以上を有する株主)が,他の株主の全員に対し,株式売渡の請求を可能としました。

   売渡請求には株主総会決議も不要です(179条)。

 

   また,従前,キャッシュアウトの手法として用いられた全部取得条項付種類株式の取得(171条)及び株式の併合について以下の少数株主保護制度を整備しました。

    ① 事前の情報開示手続

    ② 事後の開示手続

    ③ 差止請求の制度

 

 4 組織再編の見直し

   組織再編は,平成17年会社法改正で,大きく改正された点であり,改正後の見直しが従前より予定されていた分野です。

   主なポイントは以下のとおりです。

    ① 組織再編等の差止請求について明文の規定が設けられました(784条の2等)

    ② 詐害的会社分割に対する債権者保護規定の整備(759条)

 

   ②については,詐害的会社分割を詐害行為取消権を行使して,債権者の保護を図る判決がありました。

   しかしながら,詐害行為取消権を行使して初めて,債権を行使できるとするのでは債権者保護として迂遠です。

   そこで,改正法はこの点に関し,分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割をした場合には,

   残存債権者は分割承継会社に対して,承継した財産の価格を限度として当該債務の履行を請求できることとしました。

 

後半は前半と比較して記載が薄くなりました,またご紹介する機会があればと思います。