治験審査における弁護士の役割

治験審査における弁護士の役割

  弁護士の仕事は法廷に立つだけではありません。

 

 私の場合は,企業の監査役などの外,治験審査委員会の委員を務めています。

 

 市販されている医薬品は,その製造販売について厚生労働大臣の承認を得ています。この承認を得るためには,薬事法に基づいて,その薬の有効性と安全性について臨床試験を行い,その結果を資料として提出する必要があります。この臨床試験を「治験」といいます。

 そして,治験が医学的,倫理的に妥当かどうかを審査する機関を,治験審査委員会といいます。

 私は,2007年に府内の医療機関が設置した治験審査委員会の委員に就任し,現在丸5年が経過しました。

 

 薬の開発によってこれまで治らなかった病気が治ったり,これまで以上に患者の負担が減ったり,治験薬の多くは社会的な意義をもっています。

 そのために製薬会社は10年以上ともいわれる時間をかけ,100億円以上ともいわれる費用を投じて,薬を開発します。

 

 他方で,治験に参加する患者にとっては,自分の病気の治療に有効なのか,安全なのかは,完全に確認されていない薬を飲むわけですから,メリットがあるかどうかは判りません。特に,試験である以上は,治験薬と比較対照するためにプラセボ(疑似薬)を投与される場合もあり,この場合は治験参加は治療にとってむしろマイナスともなります。したがって,被験者にとっては,自分に効くかもしれないとか,将来自分と同じ病気になった人のために少し役に立つとか,そういうメリットしかないのです。

 にもかかわらず,主治医に治験の参加を促されると,簡単には断れないのが人情です。

 そのため,法令上治験には厳格なルールが定められており(GCP省令:臨床試験の実施の基準に関する省令),特に治験への参加が被験者の自由な意思でなされなければならず,そのために必要な情報が十分に提供されることが大前提となります。

 

 私は,医学薬学についてはズブの素人ですので,弁護士としては法令に配慮しながら,治験そのものの倫理性や被験者への同意説明の妥当性を意識して,審査に臨んでいます。

                                                (2012.8.4 弁護士宮藤幸一