Prix de Lausanne~ローザンヌ国際バレエコンクール

Prix de Lausanne~ローザンヌ国際バレエコンクール

Prix de Lausanne-ローザンヌ国際バレエコンクールは,毎年スイスのローザンヌで行われる,

15歳から18歳までの若手バレエダンサーのためのコンクールである。

 

このコンクールの特徴は,まだ成長途上にある若いダンサーの才能の発掘と育成を目的とするところにある。

通常コンクールといえば,それぞれの演技の完成度を競い,

もっとも完璧に演技を披露した者を優勝とするものであろう。

しかし,このコンクールは,現時点での完成度より将来の可能性に注目する。

参加する若いダンサーに欠点があることはむしろ当然との前提である。

コンクールは,全世界の応募者をまずDVDで事前審査し,

選考を通った者がローザンヌに集まるのであるが,

準決選,決選と単に踊りの優劣で振り分けるだけでなく参加者にレッスンやセミナーを施し,指導をする。

そして,最終的に選ばれた入賞者に与えられる賞も,

奨学金と,海外のバレエ学校に留学したりバレエ団で研修したりすることのできる権利なのである。

このようなことから,ローザンヌ国際バレエコンクールは若手ダンサーの登竜門といわれてる。

現にこのコンクールの入賞者は,その後世界的なバレエダンサーとして各地で大いに活躍している。

日本人では,吉田都さんや熊川哲也さんなどが有名なところである。

 

今年40回を数えたというこのコンクール,私は小学校高学年の頃から見るようになった。

毎年春頃にNHKでテレビ放送していたのである。

当時は,パリ・オペラ座バレエ学校のクロード・ベッシー校長がテレビ解説を務めており,

何の遠慮もなく参加者に対して容赦のないダメ出しをしていることが衝撃だった。

今思えば,校長はレッスン場で自分の生徒を指導するときと同じ目線だったのではないか。

ただ,そんな辛口のベッシ-校長も,日本人の参加者に対しては時折好意的な講評をすることがあり,

誇らしく思うことがあった。すなわち,日本人ダンサーは,「非常にポエジー(詩的)だ。」とか

「丁寧で雰囲気がよい。」などとよくほめられていた。

 

さて,このように長年このコンクールを見てきた私であるが,

今年の結果報道の過熱ぶりには正直驚いた。

ここまでこのコンクールの結果がマスコミに取り上げられたことはなかったのではないか。

テレビ,新聞はもちろんのこと,週刊誌までが取り上げた。

その理由は,日本人の参加者菅井円加さんが第1位で入賞したことにある。

まだ17歳であどけなさの残る彼女の快挙に,彼女の帰国前から一気に注目度が高まり,

帰国時の空港にはマスコミが大挙したほどであった。

 

彼女の演技は本当にすばらしかった。

クラシックバリエーションの「ライモンダ」は,もともと私の大好きな演目であるが,

ゆったりとしたスローの出だしに何とも言えない情緒を漂わせ,

また後半はリズミカルかつ軽やかに音に乗る。

まさにうっとりと魅せられてしまった。

また,審査委員であった吉田都さんも絶賛のコンテンポラリーバリエーションも

力強さと迫力にあふれ,印象的だった。

文句なしの第1位である。

 

日本人の若い才能が第1位となった,そのことは大変素晴らしく,

報道され多くの人に称賛されることは当然のこととは思う。

しかし,願わくば,熱が冷めたら彼女を日常生活に戻してあげたいと思う。

何といっても,彼女はまだスターでも何でもなく,

ようやくスタートラインに立ったばかりの成長途上の若いダンサーだからである。

今後,彼女が更に自分の可能性を広げ,大きく成長することができるような環境を整え,

数年後大きく花開いて再び注目されることを,今から心待ちにしているのである。

 

                              (2012.6.30 弁護士 江村純子)