二重課税

二重課税

平成2276日,一つの最高裁判決が出された。

遺族が年金形式で受け取る生命保険金に対する所得税の課税が取り消されたのである。

 

 従来,年金形式で受け取る生命保険金については,相続により年金受給権(年金を受け取る権利)を取得したとして相続税が課された上,生命保険会社から遺族への各年金支払いの際,更に所得税が源泉徴収されていた。

 そもそも所得税法上「相続により取得するもの」は非課税とされ,同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税は禁じられているのであるが,年金形式で受け取る生命保険金については,このような課税が当然の常識としてまかり通っていたというのである。

 

 なぜこのような事態が起こったのか。

 その理由は,昭和43年に出された通達による。

 すなわち,国税庁は「年金受給権と,その権利に基づいて受ける個々の年金とは別個のものであり,年金受給権は相続財産として相続税が課税されるが,個々の年金にはその受給者の所得として所得税が課税される」との法令解釈を示し,その結果,年金形式で受け取る生命保険金に相続税と所得税とが課税される運用が定着したのである。

  この運用に対して,今般最高裁判所は法令違反であると断じた。

 概略,個々の年金には,相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものが含まれており,その部分について所得税を課すことが所得税法の二重課税禁止規定に反するというのである。

  この判決を受け,国税庁が昭和43年来の法令解釈を変更し,税金の還付を行うこととしたことは報道のとおりである。今後,過去5年間に納め過ぎた税金については,税務署に更正の請求をし,減額更正処分を受け,還付してもらうことができる。

 

  ところで,この判決によって得た原告の経済的利益は,わずか2万5600円である。しかし,本件同様の生命保険契約は数十万件とも言われ,その影響は計り知れない。

  この原告及び税理士らの起こした行動の意義は大きい。

 

                                                            (H22.7.8 弁護士江村純子